丹東へ4

丹東駅前

そうこうしているうちに14時すぎ。大連行きのバスは14時50分発。錦江山公園からバスターミナルまではタクシーで5分ほどなのでそんなに焦らなくていいのだが、早めに下山。
バスターミナルの斜め向かいにある、丹東駅の毛沢東像を撮りに行こうという話になる。
タクシーで駅まで移動。大きな毛沢東像を正面から撮ろうとすると、どうしても後ろの高層マンションが入ってしまう。「北朝鮮と国境を接している町」と聞くとさびれていそうだが、発展しつつある。何枚か写真を撮っているとおじさんが近づいてきて「1枚2元で撮ってやるよ」。そこまで毛沢東様に執着はないので、お断りした。大連行きのバスも満員。行きのより古いバスで、値段も6元位安かった。
4時間後大連へ到着。ほっとする。まだ大連に来て1ヶ月しか経っていないが、すでに「帰ってきた」という感じを覚える。
近くのデパートのフードコートで晩御飯を食べ(おいしくなかった)、帰宅の途につく。


タクシーを拾うと、運転手さんが「日本人か」と話しかけてきた。
「俺の子どもはなぁ、日本に行ったんだよ。東京だ。日本語を勉強しに行ったんだ。でもそれっきり、1年以上連絡がないんだよ……。探しに行ったら、見つかるだろうか?」
日本語学校の専任教師だったSさんは、そのあたりの事情をよく知っている。
多分、初めのうちはちゃんと日本語学校で勉強していたが、予想以上に生活が苦しく、アルバイトを始めてそのまま学校に行かなくなったのだろう。
危ないことに手を出していなければいいのだが……。
わたしの語学力では、日本での状況を詳しく伝えられない。また、正直に伝えても、返って心配させるだけだ。
「うーん、東京は広いから見つけるのは難しいと思う……」としか言えなかった。
降りるまで、運転手さんは「見つからないかな?」と何度も聞いた。

わたしたちにはどうしようもない。
だが、最後に重いものをつきつけられて丹東の旅は終わったのだった。